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３２話 安堵の寝顔と、アリアの頬へのいたずら
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2025-10-17 06:00:14（……いや、アリアはただ甘えたいだけだろ……可愛いから良いけど。今のところは……無害だし）
そらは心の中でそう思いながら、アリアのタオルを受け取った。彼女の髪と体を拭いてやる手の動きは、諦めと優しさが混じり合っていた。
「わたしも～♪」
当然のように、エルも満面の笑みでタオルを差し出してきた。その表情は、拒否しても無駄だと知っているかのように余裕に満ちている。
「おいおい……昨日までは普通に自分で拭いてたじゃん……」
そらはそう内心でツッコミながらも、結局は三人の髪と背中を丁寧に拭いてあげた。幼い少女たちの甘えに、抵抗する気力は残っていなかった。
ノアのしっとりとした背中は、貴族らしい色白で滑らかな肌をしており、湯気の中で微かに光沢を放っていた。エルの健康的な背中は、拭くたびに柔らかな弾力を感じさせる。そして、アリアの小さな背中を拭うときには、純粋なぬくもりだけが伝わってきた。温かい湯気が肌に触れ、少女たちの柔らかな肌の感触が、彼の指先から手のひらにダイレクトに伝わる。その密着した状況に、そらの心臓は静かに高鳴り続けていた。
騒がしくも、どこか穏やかで温かな時間だった。
……疲れました。色々と。
夕飯の準備ができていたので、みんなで食卓を囲む。テーブルには、温かい鳥のスープと焼きたてのパンが並び、その匂いが部屋いっぱいに広がる。気がつけば、食卓はだいぶ賑やかになった。まるで大家族みたいだ。初めは一人だったのに、とそらは静かに感慨に浸った。
ふと、湯上がりでほんのり赤くなったアリアとノアの、ぷにぷにとしたほっぺに目が留まる。アリアの頬はもちもちとしており、ノアの頬は少し引き締まっているが、どちらも幼さゆえの柔らかな光沢を帯びていた。その愛らしい様子は、見ていて心が和む。
（……癒されるなぁ）
そんな風にぼんやり見つめていると、隣からジトッとした視線を感じた。ブロッサムだ。彼女は、すべてを見透かすような冷たい瞳でそらをじっと見つめている。
（な、何だよ！？ 見て癒されてるだけだけど？ 俺は気にしないぞ……）
そらは心の中でそうツッコミを入れながらも、ブロッサムの視線に居心地の悪さを感じていた。
食事を終えると、ブロッサムとステフが入れ替わりでお風呂に向かい、そらとエルで食器を洗うことになった。
その間に、はしゃぎ疲れたのだろう。アリアとノアはベッドに横になると、すぐに規則正しい寝息を立てて眠ってしまった。二人は身を寄せ合うように眠っており、その穏やかな寝顔は、そらの心をさらに和ませた。
そらはエルと共に片付けを終え、静かに寝室のベッドに腰を下ろした。柔らかな灯りの下、アリアとノアが身を寄せ合って眠っている。二人の顔には、この場所で得た安堵が色濃く浮かんでいた。
彼は、その安心しきった寝顔をじっと眺める。その無垢な姿は、この異世界で感じていた孤独や緊張を、まるで溶かしていくようだった。
（二人とも可愛いな……）
彼はそう呟き、自然とアリアに手を伸ばした。湯上がりでほんのり温かいぷにぷにのほっぺに、人差し指をそっと当てる。ぷにっ、ぷにっと、その柔らかさを確かめるように優しくつつき、そっと摘まんでみた。アリアはわずかに顔を顰めたものの、深い眠りの中にあるためか、すぐに穏やかな表情に戻った。
指先に伝わるもちもちとした感触と、彼女の甘い寝息が、そらの心を深く癒していく。その無防備な可愛らしさに、彼はつい夢中になってしまいそうだった。この静かなひとときが、彼にとって何物にも代えがたい安らぎとなっていた。
ふと、視線を感じて顔を上げた。ノアの隣で横になっていたエルが、ジト目でじっとこちらを見ていた。その瞳には、少しの不満と、そして強い期待が混じっている。
「わたしの、ほっぺも触って良いよ？ んっ！ ……はいっ！」
エルはそう言うと、にこにこしながら自分の可愛らしい頬を、そらに向かってグイッと突き出した。湯上がりでほのかに上気した肌は、アリアと同じく滑らかで柔らそうだ。その表情は、そらに甘えたいという無邪気な衝動と、どこか彼との特別な触れ合いを求める興奮を隠していなかった。
「……同じ歳だし色々と不味くない？ 変な関係だと思われるよ？」
そらは戸惑いながらも、静かにそう尋ねた。彼の心には、ブロッサムの視線や、世間的な倫理観がまだ残っている。
「えぇー？ なんでよぅー！？ ほっぺ触るくらい、いいじゃぁんっ！」
エルは不満げに口を尖らせ、拗ねたような仕草を見せた。その声には、自分とそらとの間に壁を作らないでほしいという、純粋な願いが込められていた。
そのやり取りのちょうどその時、タイミング悪くブロッサムとステフが風呂から帰ってきた。湯上がりで髪をタオルで巻いたブロッサムの表情は、すでに警戒に満ちている。
「なんか変な話してますわね……」
ブロッサムは、そらとエルの距離感と会話の内容に、疑惑の視線を向けた。ステフは一歩後ろで、何も言わずにただ二人を見ていた。
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